ヨーネ菌の治療後にクローン病と複合性局所疼痛症候群が回復したアメリカのケースレポート

2015年にアメリカ、ウエストバージニア州Charleston Area Medical CenterのKuenstner博士らはヨーネ菌感染が疑われた、難病の患者にヨーネ菌に対する治療を行い、回復した症例があったことを報告しました。一定の治療を行って効果が出た場合、原因を含めた治療的診断が可能です。興味深い症例報告としてご紹介します。詳しいことは原著論文を読んで下さいね。

①クローン病、②喘息、③複合性局所疼痛症候群、④甲状腺機能低下症、⑤1型糖尿病、⑥リンパ管腫症などさまざまな慢性疾患を持つ家族のヨーネ菌感染の証拠が示された症例報告です。ここに書かれた最初の5つの疾患を有する3人の患者の血液からヨーネ菌が培養されました。そして、そのうち2人には高い抗ヨーネ菌抗体(免疫グロブリンG)が確認されました。血縁であるリンパ管腫症の患者にはヨーネ菌に対する著しく高い抗体が検出されました。
最初の4つの疾患にかかっていた2人の患者は、抗ヨーネ菌抗生物質と紫外線血液照射治療の組合せにより疾患の総合的症状の回復が見られ治療後には血液からのヨーネ菌培養ができなくなった。これらのヨーネ菌感染症患者の症例報告は、ヒトにヨーネ菌が病原性を持つという証拠を示している。

症例1:2004年6月にウィスコンシン州立子供病院でCDと診断された9歳の男子。3歳のときから喘息が認められていた。An external file that holds a picture, illustration, etc. Object name is WJG-21-4048-g003.jpg最初の症状は持続性の下痢、体重減少、および原因不明の発熱でした。成長は彼の成長はかなり低下していました。大腸内視鏡および上部消化管内視鏡検査により結腸、末端回腸及び胃内に複数のアフタ性潰瘍が認められました。さらに結腸および胃前庭部で採取されたバイオプシー組織の病理学的検査ではクローン病に特徴的な肉芽腫が認められました。血液検査で、ヨーネ菌に対する抗体が陽性でした。さらに数ヶ月間の培養後にヨーネ菌の増殖が確認されました。この間に抗体の値は更に高くなっていた。6年に及ぶ抗生物質の治療の間に症状は一進一退であったが、ハンセン病の治療薬クロファジミンの投与と毎週1回の紫外線照射(UVBI)治療をする中で軽快して、治療中止しても問題が無くなった。抗生物質での治療開始後1年でヨーネ菌の分離培養は陰性になったという。(右の写真はクローン病に特徴的な肉芽腫:J Todd Kuenstnerら、 World J Gastroenterol. 2015 Apr 7; 21(13): 4048–4062より引用紹介しています。)

症例2:症例1の姉の23歳の女性。当初はレイノー病の診断を受けたが、数年間の甲状腺機能低下症の病歴も有して、治療を受けていた。この人はグアテマラへの旅行したことが有るためらい菌に対する抗体検査をしたが陰性であった。過敏症症候群の診断を経て、複合性局所疼痛症候群の診断がなされた。複合性局所疼痛症候群がMAP感染の症状である可能性がある疑いがあるため、血液サンプルをMAP感染のための抗体検査を行い、特異抗体の上昇と菌培養も陽性であった。神経症状はクローン病でも認められることが有り、クローン病患者の兄弟は一般集団よりもクローン病のリスクが高いと言われている。2年ほどのヨーネ菌に対する治療などを行い、甲状腺機能は性状に戻り、神経症状も良くなった。

症例3:症例1と2の叔父が1型糖尿病であった。1型糖尿病もヨーネ菌との関わりが疑われている。この叔父さんには一型糖尿病およびクローン病で認められる血清学的マーカーであるASCA IgAの値が上昇していたが、ヨーネ菌に対する抗体は陰性であった。この人はヨーネ菌に対する治療を拒否されました。

症例4:症例1および2の母親の甥は病因が不明なリンパ管腫症を発症していた。また、非常に高いヨーネ菌抗体を有していました。ヨーネ菌検出のためのPCR検査およびMAP培養結果は陰性であった。VEGF(Vascular endothelial growth factor; 血管内皮細胞増殖因子)も非常に高かった。正常値は(参照範囲31〜86pg / mL)であるのが506pg/mLだった。この症例のヨーネ菌に対する高い抗体と本病の関係が更に調べられるべきです。

症例5:症例1および2の父親のヨーネ菌感染について試験した。血液を6ヶ月間培養した結果ヨーネ菌の増殖が認められた。この人は12歳で花粉症(喘息)を発症している。彼の血液はp35およびp36のヨーネ菌に対する抗体陽性を呈した。

*この症例報告だけで、ヨーネ菌と自己免疫病などとの因果関係に結論を出すことはできませんが、このような所見を集めて重ねて行く研究も原因不明疾患の解明につながっていく道筋だと思います。百溪研究室でも花粉症などの症状を持つ方にヨーネ菌に対する抗体を証明してきています。現在は幾つかの大学や医療機関と炎症性腸疾患とヨーネ菌の関係を調べる協同研究を進めています、4月以降はCMRIとして研究を継続していますので、皆様方のご支援が必要です。

World J Gastroenterol. 2015 Apr 7;21(13):4048-62.
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