多発性硬化症患者の多くで発症以前に胃腸症状が先行

多発性硬化症は現在も原因が明確にされていない疾患ですが、ヨーネ菌の関与を疑わせる研究データーが増加しています。ヨーネ菌は家畜の慢性腸炎、ヨーネ病という伝染病を起こす病原体ですが、人の原因不明疾患の一つにクローン病があります。中枢神経系の病気であるMSと胃腸症状がリンクしていることは疾病の病理発生機序の解明に要注目です。

論文要旨
多発性硬化症(MS)と診断された患者さんの半数で症状の一部として腸管機能不全が起こるが、164例の患者の後向き研究を実施した所45%の患者さんで最初の診断以前に胃腸症状を経験していることが明らかにされた。
最も頻度が高い症状は、胸やけと逆流であった。
これらの胃腸症状が起きてからMSが発症するまでの平均的期間は4.37年であった。


Sa1080 – Gastrointestinal Symptoms Frequently Predate the Diagnosis Among Many Multiple Sclerosis Patients: Results from a 14-Year Cohort Study

Mariana Almeida, Casey J. Silvernale, Kyle Staller,
Gastroenterology, Vol. 154, Issue 6, S234
DOI: https://doi.org/10.1016/S0016-5085(18)31161-2

NMRIのコメント:胃腸で何かが起こって4年以上経過してからMSの神経症状が起こるということからもMSの発症に至る複雑で慢性的なプロセスが必要なのだろう。
ヨーネ菌は仔牛に感染後3~6年の期間を経て発症することが知られている。この長い潜伏期間の間に、菌側か生体側免疫機構のどちらかか両方に変化が生じて、著しい菌増殖が許されて腸の病変が作られていく。この潜伏期間とこの論文に出された4.37年後のMS発症ということに関係があるかもしれない。

*原著が入手できましたら詳しいことを加えます。

以下は参考図譜
MS-related nervous system damage

図版はMayo Foundation for Medical Education and Research (MFMER).のHPより引用。https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/multiple-sclerosis/symptoms-causes/syc-20350269