COVID-19における播種性血管内凝固症候群DIC

はじめに

現在も世界中で猛威をふるっているCOVID-19ですが、他の感染症に比べて重篤化する患者さんや亡くなる方が多い理由の一つにこのウイルスが細胞に感染する際に接着して侵入するのに使用しているACE2タンパク質が血管内皮細胞はじめ全身に分布している事があります。(日本語訳をご覧ください
血管内皮細胞は血管の最内側を覆う血管内皮を作る細胞ですが、これは単に血管の層構造を作る細胞というわけではなく、血管が傷ついたり、血管内部で異常が起こった時にとっさに生体防御反応を起こすための様々なスイッチが備わっています。血管の損傷を修復するための血液凝固系、血管障害の原因に対応するための炎症性サイトカイン系などが速やかに起動する仕掛けがあります。COVID-19がわかりだした頃、この感染病理が単なる肺炎ではなく、毛細血管に主座するものであることはCOVID-19の発生初期の解剖例から示唆されていますが、細菌まで多くの研究論文が報告されていますので今回は、これをReviewして皆様にお読みいただこうと思います。
EClinicalMedicineVolume 24, July 2020, 100434

巨核球と血小板フィブリン血栓は、COVID-19 の剖検で多臓器血栓症を特徴付ける: 

COVID-19 の血栓形成促進状態の認識が高まっています。剖検は重要な病理発生機序の洞察を提供してくれています。ニューヨークの学術医療センターでの剖検症例のうち、肺、心臓、腎臓、肝臓、骨の所見を含む症例が紹介されています。

女性4名を含む7 人の患者において、抗凝固薬の使用の有無に関わらず、肺、肝、腎、および心臓の微小血管系に血小板に富んだ血栓が観察された。肺や心臓では巨核球が通常より多く認められた。2 例では大動脈に血栓が見られcast( 管形状にあった形状の硬化物)が形成されていました。下大静脈(IVC) の血栓は見つかりませんでしたが、足の深部静脈は冒険されていません。2 例には心静脈血栓症があり、1 例はアテローム性動脈硬化症を伴わない、心筋内静脈血栓症に関連した中隔心筋梗塞が起きていました。
1 例では、心筋細胞にウイルス粒子は見られず、心筋における限局性急性のリンパ球優位の炎症が見られました。それら以外では、心臓の病理組織学的変化として最小限の心外膜炎症 ( n = 1)、初期の虚血性損傷 ( n  = 3)、壁側フィブリン血栓 ( n  = 2)が見られました。
血小板が豊富な尿細管周囲のフィブリン微小血栓が腎臓の顕著な特徴でした。急性尿細管壊死、赤血球および顆粒円柱が複数の症例で見られました。重要な糸球体病変は特認められなかった。多数の血小板フィブリン微小血栓が肝類洞に認められた。全例の肺では上皮細胞およびマクロファージにウイルス封入体が認められ、硝子膜、および肺炎細胞過形成を含む一連の浸出性~増殖性の段階を伴うびまん性肺胞損傷 (DAD) を示した。3 例では急性の気管支肺炎が合併しており、局所的な壊死も認められた。

この一連の 7 つの COVID-19 剖検では、血栓症は複数の臓器で顕著な特徴であり、完全な抗凝固療法にもかかわらず、疾患経過のタイミングに関係なく、場合によっては、血栓症が疾患プロセスの非常に早い段階で役割を果たしていることを示唆しています。

肺、心臓、腎臓における巨核球と血小板に富んだ血栓の発見は、血栓症における役割を示唆しています。

 

COVID19 update: Covid19-associated coagulopathy
とても素晴らしい総説がPDFが公開されています。