乳製品などからのヨーネ菌DNAの検出
食品中、特に乳製品中のヨーネ菌DNAの検出の意義は以下のような理由です。
ヨーネ菌汚染 反芻動物の伝染病(日本では家畜法定伝染病指定)であるヨーネ病はヨーネ菌という細菌に起因する感染病です。日本では家畜伝染病予防法という法律により厳しく検査がなされており、世界で一番清浄化が進んでいますが、海外には日本のような国レベルの防疫体制がなく汚染が深刻な状況にあります。
ヨーネ菌と人の疾患 ヨーネ菌は結核菌やハンセン病の原因であるらい菌の仲間で抗酸菌(マイコバクテリア)に属する細菌です。1932年にクローン病の専門医師Burrill Bernard Crohn医師らが原因不明の一連の腸炎の論文報告をし、腸炎の病理学的所見が牛のヨーネ病に類似することから、原因菌は共通しているのではないかとコメントをした。
近年の研究進展 クローン医師の発表後、クローン病の病変からヨーネ菌の分離などが試みられましたが、ほとんどうまくいきませんでした。しかし、ヨーネ菌を遺伝子レベルで高感度に検出するPCR法が適用されるようになり、検出ができるようになりました。しかし、クローン病以外の炎症性腸疾患や炎症の無い腸組織などからも検出され、ヨーネ菌=クローン病の原因とはなっていません。しかし、ヨーネ菌の免疫修飾作用が自己免疫病を誘発していると考察する論文発表が国際的に増えています。(参考:サルコイドーシス学会での講演要旨)
学会からの注意勧告 米国微生物学会(American Academy of Microbiology)は 2008 年に委員会報告としてヨーネ菌とクローン病には関連があると発表しました。しかし、ヨーネ菌が病原因子なのか増悪因子なのか、単に共存しているのかのさらなる研究が必要としています。PDFファイルはこちら
国際的な注意勧告 2007年に開催された TAFS(家畜の伝染病と食品衛生の国際フォーラム:International Forum for Transmissible Animal Diseases and Food Safety) と FAO 及び OIE の共催により開催されたヨーネ菌と食品の安全に関するワークショップ(スイス)や、2008 年の TAFS からの「ヨーネ菌に対するリスクマネージメント計画:Recommended Risk Management Plan for Paratuberculosis」と題する報告でもヨーネ菌と食の安全に関する問題が評価されている。
食品安全委員会の資料 我が国の公的見解はどうでしょうか。内閣府の機関である「食品安全委員会」では諸外国の注意勧告を受けて、平成 21 年度食品安全確保総合調査 「食品により媒介される感染症等に関する文献調査報告書(社団法人 畜産技術協会作成)」の中にヨーネ菌についての現状認識を明確にしています。 PDFはこちら。
厚生労働省の見解 厚生労働省は人に健康被害の恐れがあると判断し、酪農畜産物の規制強化。「ヨーネ病につきまして文献的な情報といたしまして、クローン病でありますが、これは回腸に起きる病気でございますが、そちらとの関連を指摘するというものがございまして、健康の安全確保という観点から私どもといたしましてはこれを管理すべき疾病というふうにとらえているというところでございます。人への健康の影響ということが懸念されます。(厚生労働省医薬食品局食品安全部、藤崎部長、当時)」と答弁しました。(農林水産委員会 – 10号 平成20年05月13日「牛のヨーネ病のリスク評価・管理に関する件」) 参議院ホームページ当該委員会の記録のページを見る。
ヨーネ菌が関与しているのではないかと論文で指摘されている原因不明の疾患
◯以下の医学文献検索結果を御覧ください。
クローン病 PubMedの検索結果を御覧ください。
多発性硬化症 PubMedの検索結果を御覧ください。
1型糖尿病 PubMedの検索結果を御覧ください。
パーキンソン病 PubMedの検索結果をご覧ください。
リューマチ PubMedの検索結果をご覧ください。
サルコイドーシス PubMedの検索結果を御覧ください。
ブラウ症候群 PubMedの検索結果を御覧ください。
自己免疫病一般 PubMedの検索結果を御覧ください。
アレルギー PubMed の検索結果を御覧ください。
大腸癌 2018年の文献です。
食べ物については「安全安心」が基本です(農水省)。
これだけ疑われている病気が海外では恐ろしく蔓延しており、牛乳の汚染も多くの報告がある状態を危惧しております。しかし、現在我が国でヨーネ菌と人の疾病の関連について研究をしているのは比較医学研究所CMRIと順天堂大学医学部だけです。
関連研究については島根大学医学部、東京慈恵会医科大学医学部、三軒茶屋病院・三軒茶屋クリニック、麻布大学生命・環境科学部 臨床検査技術学科、東京農業大学生命科学部とも研究協力体制があります。
わからない所があればメールフォームからお尋ね下さい。
食の安全安心に関心を持つ多くの方々に、この問題について正しい理解を持って欲しいと思っています。
(文責 百溪)