菌が粘膜を突き抜ける!バクテリアトランスロケーションとは?

通常では、菌はバリアを超えて移行することはできませんが、腸粘膜のバリヤー機能が低下した場合には菌が腸内から組織内に入り込む現象が起こります。
これをバクテリアトランスロケーションと言います。「場所を変える」と言った意味です。

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腸管から体内に移行すると、腸間膜リンパ節から肝臓、脾臓、腹腔へと侵入します。
病原菌が入る場合には血中に入り込んで、出血性ショック敗血症の際のエンド トキシンショックなどが起こる場合もあります。

最近、“菌そのもの”が腸管を通過しなくても、菌や様々な由来の「外来性物質」が入り、受容体に作用して炎症過程を悪化させる事もわかってきました。
生きた細菌そのものが入り込まなくとも、広い意味でのバクテリアルトランスロケーションとみなされるようになっています。

 

上の図はTranslocation of gut flora and its role in sepsis,C Vaishnaviら、
Indian Journal of Medical Microbiologyear,  2013, 31(4) 334-342より引用しました。

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東京医科大学病院救命救急センター長・准教授の解説の図を引用させていただきましたが、とてもわかり易いのでぜひお読み下さい。

たまに、「腸洗浄」と称して、腸内に大量の浣腸液を注入して、「腸内を洗ってきれいにする」といった医療があるようですが、上の図のように腸粘膜はたった一層の粘膜上皮細胞で覆われており、その表面を厚い粘液が覆って、腸のバリヤーを保っています。腸洗浄などでこの粘膜を除いて、腸粘膜上皮を傷つけたら一体どういう事が起こるのか、分かる人はやらないと思います。非常に危険だと思います。

*ただし、腸の内視鏡検査などで必要ならば仕方がありませんよ。

もう少し知りたい方はこちらもどうぞ。http://medicalfinder.jp/doi/abs/10.11477/mf.3102100073