マウス骨髄マクロファージ培養法 (proteintech)

骨髄由来マクロファージ(BMDM)の培養方法

マウス骨髄由来マクロファージの採取と培養を成功させるためのポイント

マクロファージ(Macrophage)は、適応免疫系で重要な役割を担う細胞であり、多くの疾病に関与しています。マクロファージは、マクロファージ様細胞株であるマウス由来RAW264.7細胞等を用いてin vitroで研究することができます。しかし、細胞株は不死化しており、多くの場合、細胞本来の機能を反映していません。初代マクロファージは、マウス骨髄から採取および培養される初代培養細胞であり、骨髄由来マクロファージ(BMDM:Bone Marrow Derived Macrophage)に分化させることが可能です。骨髄由来マクロファージ(BMDM)はマクロファージの機能をより正確に示すモデル細胞です。初代培養細胞は取り扱いが難しいため、採取と培養のためのいくつかのポイントをまとめました。

マウス骨髄由来マクロファージ(BMDM)の採取・培養ワークフロー

図1:マウス骨髄由来マクロファージ(BMDM)の採取・培養ワークフロー

 

骨髄由来マクロファージ(BMDM)の採取と培養を成功させるポイント

  1. 無菌に保つ:余分な組織をすべて除去し、採取する骨髄へのコンタミネーションを防ぐために骨を70%エタノールで完全に清拭してから骨端を切断します。骨の外側は無菌ではないため、細胞培養時に細菌等がコンタミネーションする可能性があります。また、コンタミネーションのリスクを最小限に抑えるために、骨髄培養用培地へのペニシリン/ストレプトマイシン等の添加を推奨します。可能な場合は、滅菌された環境下で採取を実施します。骨の外側に存在する骨髄以外の細胞が骨髄採取の際に混入し、マクロファージ前駆細胞よりも増殖する可能性があります。
  2. 単一細胞懸濁液の調製:注射針とシリンジを使用して洗い流し(フラッシング)、細胞の塊をばらばらに分離します。骨髄は大きな細胞の塊のまま洗い流される場合がありますが、注射針で上下に洗い流すことで単一細胞の懸濁液を調製することができます。大きな細胞の塊が除かれたら、メッシュサイズが70µmのセルストレーナーを使用して細胞懸濁液をろ過し、骨片を除去します。
  3. 骨髄中の赤血球の溶血:溶血操作により、懸濁液中のマクロファージ前駆細胞の割合が高くなり、骨髄由来マクロファージ(BMDM)の収量が増加します。
  4. 細胞数・細胞密度の計測:一般的な血球計測盤と顕微鏡を用いて骨髄細胞数を計測し生存細胞を確認してから、分化のために細胞を播種してください。骨髄細胞は非常に微小な細胞であり、自動セルカウンターでは正確な細胞数を計測できない場合があります。骨髄細胞の増殖と分化には細胞密度が大きく関わります。1×106 cells/mL程度を目安に得られた細胞を播種してください。
  5. 適切な培養プラスチック容器の使用:組織培養用コーティング無処理プレート(滅菌済の細菌用シャーレ、Non-tissue culture coated plastic)を使用して、骨髄細胞をマクロファージへ分化させます。初代培養細胞はプレートに非常に接着しやすいため、プレートから剝がせなくなり、培養した細胞を新たに播種できなくなるおそれがあります。
  6. 厳密な細胞フィーディング・培養条件に従う:BMDM培地は、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF:Macrophage Colony Stimulating Factor)を含有していなければなりません。M-CSF含有培地には、M-CSF組換えタンパク質(10ng/mL)を添加するか(例:HumanKine® M-CSF)、M-CSFを分泌する性質のあるマウス線維芽細胞株(L929細胞)を使用した馴化培地(BMDM培地あたり20% v/v)を使用します。細胞播種4日目に、新たに等量の培地を添加して培地を倍に増量します。培地は細胞に影響を与えないように1滴ずつ添加します。細胞播種7日目までに、細胞はマクロファージへ分化します。マクロファージへの分化が確認できたら、プレートから剥がして実験の為に再度播種します。細胞を維持するために、播種後48時間経過するごとに培地の50%を新たな培地に交換します。初代培養細胞は自己分泌因子への感受性が高いため、培地をすべて交換してはなりません。
  7. 培養早期はそっとしておく:播種直後の数日間は細胞の状態を確認したくなりますが、最初の4日間は培養プレートを動かさないようにして、プレートに細胞を接着させます。
  8. タイミングが重要:骨髄由来マクロファージ(BMDM)は播種後7日間で分化します。実験(マクロファージ分極化等)は、分化完了時点から開始し、その後1週間以内に完了する必要があります。それ以降になると、細胞はもはや典型的なマクロファージの表現型や遺伝型を示さなくなります。

 

骨髄由来マクロファージ(BMDM)研究用マーカーの関連製品

ARG1CD32Ly6G
CD11bCD68TLR2
CD11cF4/80TLR4
CD124/IL-4RIFNgTNFa
CD16IL-4
CD206iNOS

 


参考文献

Rios, F. J., Touyz, R. M., & Montezano, A. C. (2017). Isolation and differentiation of murine macrophages. In Hypertension (pp. 297-309). Humana Press, New York, NY.

Manzanero, S. (2012). Generation of mouse bone marrow-derived macrophages. In Leucocytes (pp. 177-181). Humana Press.

Assouvie, A., Daley-Bauer, L. P., & Rousselet, G. (2018). Growing murine bone marrow-derived macrophages. In Macrophages (pp. 29-33). Humana Press, New York, NY.

 

ブログ著者:Lucie Reboud(マンチェスター大学博士課程(がん研究専攻)、プロテインテックのインターン生)

https://www.ptglab.co.jp/news/blog/how-to-culture-bone-marrow-derived-macrophages/
学生や研修生用の実験法の資料です。