大腸菌性の牛乳房炎ではヨーネ菌の排菌が加速される(ブラジル)

2018年ブラジルのUniversidade Federal de Viçosa (UFV)獣医学部のSchwarzらは、ヨーネ菌感染している牛では、乳房炎感染が起こることによりヨーネ菌のミルク中への排菌が加速させることを報告しました。

牛の乳腺の細菌性の炎症は細菌がまず乳腺細胞に接着することから始まります。そして細胞内に侵入して、細胞内にとどまり、さらに全身に広がります。
大腸菌のような細菌など、幾つかの菌種がウシ乳房炎の原因として知られています。乳房組織内に急性の炎症誘発反応を起こすのです。

ヨーネ病の原因菌であるヨーネ菌は腸管腔から腸上皮細胞を通過して、腸以外の臓器に広がりうる。乳腺に到達すればミルク中に排出されて哺乳中の子牛に感染していくのです。全身部位からのヨーネ菌の排出には、すでに大腸菌性の乳房炎に感染しているか否かが影響を与えているようです。

炎症を起こしている乳腺上皮細胞における大腸菌とヨーネ菌の間の相互作用はこれまで報告がありませんでした。生体外培養モデルを用いた本研究で我々は大腸菌感染したウシ乳腺上皮細胞ヨーネ菌を基底膜側から外側に向けてのトランスロケーションを促進する事を明らかにしました。

「cattle illustration free」の画像検索結果我々は、ウシ乳腺上皮細胞培養株(MAC-T)を用いて大腸菌の存在がヨーネ菌規定側から先端側へのトランスロケーションを増すことを示せたのです。トランスロケーションのレベルは感染後30分で著しく高まり、感染後30分で低下しました。あらかじめ大腸菌とヨーネ菌、もしくは大腸菌を単独で汚染させた細胞は、120分後にインターロイキン1β(サイトカインの一種)のメッセンジャーRNAの発現の有意の増加が見られました。菌感染の有無にかかわらずp38マイトジェン活性性プロテインキナーゼ(mapkp38)やインターロイキン10の活性化は見られませんでした。

MAC-T細胞に大腸菌が感染していると、それによりヨーネ菌が乳腺上皮細胞の下部から上部、すなわち体内から体外へトランスロケーションによる急速な排菌が可能になるということなのです。感染120分後のインターロイキン1βの発現は、乳腺上皮がヨーネ菌を排出することに関与しているようです。

本研究からの所見は、乳腺上皮細胞を通過しての乳中へののヨーネ菌の排出は炎症性の状態によって亢進される可能性があることを示唆するものです。
これは、実験室レベルで大腸菌がヨーネ菌と同時にウシ乳腺上皮細胞に感染が起こる時、大腸菌がヨーネ菌のミルク中への排菌を促進するというはじめての報告です。

Rapid baso-apical translocation of Mycobacterium avium ssp. paratuberculosis in mammary epithelial cells in the presence of Escherichia coli.
J Dairy Sci. 2018 Apr 25. pii: S0022-0302(18)30380-1

 

*牛の乳房炎はしばしば遭遇する病気で、ミルク中に炎症細胞が出てきますが、私はヨーネ菌が細胞内寄生菌であるため、これらの炎症細胞とともにミルク中にでてくると考えていましたが、もし乳腺内にfreeのヨーネ菌が存在する場合にはこのようなことが起こるのかもしれません。ヨーネ菌はマクロファージ細胞内でしか増殖できない特殊な細菌ですから。(CMRI百溪注)

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