第14回ICP速報:ミニブタのヨーネ菌自然感染例の報告(アメリカ)

第14回ヨーネ病国際学会には珍しい、豚のヨーネ病の報告が、アメリカのミネソタ大学から発表されていました(ポスターセッション)。豚は人間と同じ単胃動物です。ヨーネ病の主たる感染宿主は反芻動物ですので、反芻動物と豚を同じところで飼育しているような場合には、これを機会に注意が必要だと思われます。

発生の概要

ヤギは牛や山羊ととともにヨーネ病に感染する重要な動物種です。報告したHancock先生はミネソタ大学の獣医師です。この先生が趣味で飼育されているBoer goat(ヤギ)と一緒の場所で飼育していた12歳のポットベリー種のミニチュアピッグ「ペティーPetey」が次第に痩せて来て、食欲がなくなり、間歇的に下痢をするようになりました。血液の寄生虫は白血球増多症を示し、超音波検査では小腸の腫れを示していました。

検査結果としてはサルモネラチフィムリウム(ネズミチフス菌)と便のPCR検査ではヨーネ菌遺伝子陽性でした。

便の好気性培養検査ではブラキスピラ、サルモネラなどは陰性、豚に腸腺種症を起こすローソニア、豚伝染性下痢症ウイルス(PEDウイルス)、伝染性胃腸炎ウイルス(TGEウイルス)、豚デルタコロナウイルス(Porcine deltacoronavirusu)も陰性でした。糞便中に寄生虫やオーシスト、シストは見られなかった。

治療:当初はサルモネラ感染を疑って、オキシテトラサイクリンやトリメトプリンを与えられましたが、ヨーネ菌との診断をされてから、イソナイアシドとリファンピンに変更。豚の容態は進行性に悪化したので、安楽死させて解剖された。

病理組織学検査:腸粘膜と粘膜下組織には類上皮細胞の増殖がびまん性に起こっていて、その細胞内には1×2μmほどの抗酸性の桿菌が充満していた(組織写真が示されていました)。

組織の電子顕微鏡観察では、典型的な類上皮細胞の所見と特徴的な抗酸菌の所見が認められました。

分離菌の遺伝子解析により全塩基配列が明らかにされ、同居ヤギのヨーネ菌と一致して、異種動物間での水平感染が証明されました。

考察と結論として、豚のヨーネ病は極めて珍しく、ポットベリー種では世界で初めて見つかった。野生の猪での感染報告はある。
報告者らは単胃動物である豚は人のクローン病とヨーネ菌の関係を研究するための新たな実験系になるのではないかとの提案をしていました。

ルーシーハンコック先生のプロフィール(Linked inに公表しているもの)
Senior Veterinary Student with a special interest in small animal and exotic medicine, shelter medicine, clinical oncology, and mycobacterial diseases. Skilled in client communication, low stress animal handling, surgical assisting, anesthesia, research and strategic Planning. Strong community and social services professional with personal experience in pot-bellied pig and goat medicine.

Lucy Hancock

CNRIのコメント:ポスターセッションに掲示されていたポットベリーの腸粘膜の肉芽腫中の抗酸菌数は著しく多いものでした。
ポットベリー豚のヨーネ病感染は病理組織や電子顕微鏡所見からも間違いありません。