早期発症型炎症性腸疾患におけるヨーネ菌の検出(オーストラリア)
バックグラウンド:
ヨーネ菌(Mycobacterium avium subspecies paratuberculosis:MAP)は、炎症性腸疾患(IBD)との関連がもっとも古くから疑われてきている感染病原体の候補である。オーストラリア、ビクトリア州の小児研究所のカークウッド博士らの研究は注目に値します。研究概要をご紹介します。
成人の患者でなされてきたヨーネ菌の罹患率の試験研究に見られてきた矛盾点は、疾患のステージや治療計画の時期的なことによる成人患者の臨床状態の差異や、用いられてきたアッセイ法の特異性に起因する可能性もある。
この研究の目的は、臨床的治療がなされる前の初期内視鏡検査で得られた腸生検組織および末梢血単核細胞(PBMC=血液中の単核細胞とはリンパ球とマクロファージのこと)を使用して、クローン病(CD)および潰瘍性大腸炎(UC)の症状を有する小児におけるヨーネ菌の存在の可能性を判定することである。
方法:
腸の粘膜生検および/またはPBMC標本を合計142人の小児から採取した。CD 62例、UC患者26例、非IBD患者54例を対象とした。
MAP特異的IS900のPCR法による検出をすべての生検材料およびPBMC検体について実施した。10人のCD患者、2名のUC患者、および4名の非IBD患者のグループについては従来のヨーネ菌の培養を実施した。
結果:
粘膜生検材料からのヨーネ菌IS900-PCR検査では、非IBDの患者15%(6/39)よりもCDの患者の39%(22/56)で有意に高い検出率が示された(P <0.05)。
一方、末梢血単球を用いたPCR検査ではCD患者の16%(8 / 50)が陽性を示し、非IBD患者の0%(0/31)よりも有意に効率であった(P <0.05)。
生きたヨーネ菌の生検組織を用いた培養検査ではCD患者の4/10例、UC患者の0/2例、非IBD患者からは0/31例が培養されたが、PBMCサンプルの培養では陰性だった。
結論:
小児IBD患者の腸組織および血液単核細胞中のヨーネ菌に関するこの研究は、小児のクローン病の発症初期にヨーネ菌が関与している可能性を示唆している。
CMRIからのコメント:
彼らが言うように乳幼児や小児のクローン病患者から得られる情報は、治療を重ねてこじれている成人患者のサンプルよりも原因に忠実な可能性があります。生後数週間で発症して、治療に抵抗する早発性の小児クローン病の原因究明が急がれます。腸が機能しないとそのお子様の成長に著しい影響をきたしますから。CMRIは病院や大学での検査に技術的なご協力をいたします。
Mycobacterium avium subspecies paratuberculosis in children with early-onsetCrohn’s disease.
*こちらも参照してください。
早期発症型炎症性腸疾患
そうきはっしょうがたえんしょうせいちょうしっかん
Early-onset Inflammatory Bowel Disease