小児の1型糖尿病(T1D)の発生増加とヨーネ菌エピトープ(イタリア)
小児の1型糖尿病(T1D)の発生増加の報告数が増加しています。この病気では早期診断をすることが、正しい治療と食事を決めていくためにに非常に重要です。現在では、特に小児患者において重要なバイオマーカーである「膵島自己抗体」の同定をすることがリスクのある子どもの診断において大切です。最近の研究により症状発現前にも膵島のZnT8タンパク質に対する抗体の検出により1型糖尿病の発生を予測することができる事が示されています。イタリアのササリー大学のグループは以前、成人のサルデーニャ島の1型糖尿病患者とヨーネ菌抗原の有意な関連性を報告しています。この発見をもとに、ヨーネ菌とプロインシュリンに共通するアミノ酸配列(相同的エピトープと言います)であるZnT8に対する抗体の存在を調査しました。こういった調査はTRIG studyとよばれている遺伝的にリスクのある1型糖尿病の発症を抑える取り組みです。
TRIGR検査で1型糖尿病のリスクがあるとされた23人の小児の48%にこの相同ペプチド(共通抗原)に対する抗体が見つかりましたが、22人の正常対象児には5.85%にしか認められませんでした。ヨーネ菌由来の共通アミノ酸配列は加水分解された調乳に広範囲に存在することから、膵臓のβ-細胞を攻撃する自己免疫を刺激している抗原として作用しうると考察している。
J Diabetes Res. 2016;2016:5842701. doi: 10.1155/2016/5842701. Epub 2015 Dec 28.
Recognition of ZnT8, Proinsulin, and Homologous MAP Peptides in Sardinian Children at Risk of T1D Precedes Detection of Classical Islet Antibodies.
*この論文は原著論文をPDFでダウンロードできるオープンアクセスです。
*CMRI注:乳製品にコンタミしているヨーネ菌成分が腸組織でリンパ球を刺激して、そのヒトの遺伝的な背景(体質)により、膵臓や腸粘膜、脳脊髄、甲状腺などを攻撃する異なった性質の病原リンパ球を作り出しているのではないでしょうか。ヨーネ菌抗原(成分)にはそれ自体に強い免疫修飾作用があるからです。
*大規模な別の研究では加水分解工程のある粉ミルクと旧来型の粉ミルク摂取の比較では小児の1型糖尿病の発症に有意差はなかったという報告もあります。これらの研究にヨーネ菌抗原のコンタミネーションが有ったか無かったのパラメーターを加えたさらなる解析が必要だと思われます。(JAMA. 2018 Jan 2;319(1):38-48. doi: 10.1001/jama.2017.19826.
Effect of Hydrolyzed Infant Formula vs Conventional Formula on Risk of Type 1 Diabetes: The TRIGR Randomized Clinical Trial.