ヨーネ菌とアレルギー発症との関連。世界初の発見(百溪研究室)

アレルギーの患者さんの数は世界中で増加しています。アレルギーを引き起こす原因物質はわかっていますが、なぜそうなるのかはまだ不明なのです。これが判明すればアレルギーを起こさせない予防や新たな治療法も開発される可能性があります。
百溪研究室では免疫修飾作用(免疫を弱めたり、過剰に暴走させたりする作用)を持つヨーネ菌Mycobacterium avium subsp. paratubersulosisはアレルギーの発症に関与している可能性があるのではないかという仮説を立てました。ヨーネ菌の感染であるヨーネ病は世界中で蔓延し、ヨーネ菌やヨーネ菌死菌が乳製品に存在することが多くの論文で示されているからです。

ヨーネ菌はTh1(細胞性免疫優位)からTh2(抗体産生優位)への免疫調節スイッチを操作することができることから、いくつかのヒト自己免疫疾患との関連が推測されてきています。この関与の可能性を調べるため、インフォームドコンセントを通じて研究の趣旨を理解していただいた上で、種々のアレルギー疾患(花粉症)などをもつ99人の患者さんおよび45人のアレルギーの無い対照者の血清の提供を受けました。ELISA法を用いてまず血清中のIgEレベルについて調べ、さらにヨーネ菌特異的IgEについても調べました。

その結果、アレルギー患者の平均全血清IgEレベルは256±235IU/mLと高く、対照では62±44IU/mLでした。アレルギーを持つ患者群の99人の被験者のうち50人が150IU/mL以上の総IgEレベルを示しましたが、非アレルギーの49人は150IU/mL以下のIgEレベルでした。

さらに興味深いことには、総IgEが150 IU/mL以上の人の50人中6人(12%)がヨーネ菌に対する特異的 IgE陽性でしたが、150 IU/mL 以下の人にはヨーネ菌に対する特異抗体を持つ人は一人もいませんでした。

私達はこの研究でヨーネ菌が人に対して特異的IgEを誘導することを世界で初めて明らかにしました。このことは遺伝的に素因がある個体におけるアレルギー性炎症の誘発に寄与する可能性があることを示しています。これまで、抗酸菌(マイコバクテリア)は人の細胞性免疫を刺激して抗体産生は抑えるのではないかと一般的に考えられてきましたが、ヨーネ菌は細胞性免疫と抗体産生の両方の刺激をする分子を菌体が持っていることから、人にアレルギーを起こりやすくさせている疑いがあるという新たな問題提起をしました。

Int J Inflam. 2017;2017:7959154. doi: 10.1155/2017/7959154. Epub 2017 Apr 24.
Mycobacterium avium subsp. paratuberculosis Induces Specific IgE Production in Japanese People with Allergies.

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