ヨーネ菌はクローン病だけでなく過敏性腸症候群にも関連(イタリア)

ヨーネ菌は、霊長類を含む多くの種に感染して腸のヨーネ病を引き起こす病原細菌です。慢性の炎症を引き起こします。感染は世界中の家畜に蔓延しており、人間の集団も暴露を受けていることが知られています。ヨーネ病は腸の神経調節異常を含む免疫調節不全を伴い、ヒトの過敏性腸症候群(IBS)の特徴と共通点があります。

本研究ではヨーネ菌感染と過敏性腸症候群の間の関係を探す点にポイントを置いている。イタリア、サルジニア島のサルジニア大学病院に通院している過敏性腸症候群患者から回腸と上行・下行結腸の粘膜生検材料を得た。研究にはクローン病と健常(非IBD、IBS)の対照群のサンプルも含まれた。

ヨーネ菌は、ヨーネ菌に特異的な挿入配列であるIS900をターゲットとしたPCRによって検出された。
これらの病原体への人間の暴露元として疑われるリスクファクターであるサルデーニャヒツジから分離されたヨーネ菌株のデータも得られた。

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上の写真はIBSグループの47歳の男性の腸粘膜の内視鏡所見。
T:回腸末端、A:上行結腸、D:下行結腸
下の電気泳動の写真のレーンのT,ADは上の写真の部位と同じ粘膜を用いたPCR所見。
回腸から結腸粘膜まで広くヨーネ菌DNAが分布していることがわかります。
*オリジナルデータはhttps://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17913930 から見られます。

結果
ヨーネ菌DNAは、過敏性腸症候群患20例中の15例(75%)、健常対象者の20人中の3人(15%)そしてクローン病患者23人のうちの20人で検出された。健常対照者とIBS患者間の有意差はP = 0.0000で、クローン病患者間にはP=0.000の有意差であった。具体的なデータが表になって示されています。
詳しい内容は原著のデータページを御覧ください。https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2168579/table/t1/?report=objectonly

一塩基多型
各々の群のPCR産物の1例にはIS900の247番目に一塩基多型(SNIP)が見られ、同様の変化はヒツジの7匹から分離されたヨーネ菌株にも見つかった。
ヨーネ菌感染と手製のチーズの消費の間の有意な関係(P = 0.0018)が、あった。

結論
ヨーネ菌は、クローン病のと同様に過敏性腸症候群の一部の症例の因果関係の候補病原体である疑いが示された。

本論文はオープンアクセスです。どなたでも読み出す事ができます。
. 2007 Dec; 45(12): 3883–3890.
Mycobacterium avium subspecies paratuberculosis infection in cases of irritable bowel syndrome and comparison with Crohn’s disease and Johne’s disease: common neural and immune pathogenicities.

CMRIの解説:
*ヨーネ病の臨床発症例では起こったり止まったりといった「間歇的な下痢」が見られますが、人のIBSは下痢や便秘を慢性的にくりかえすのが特徴です。そのため、この臨床症状が類似していると指摘されています。IBSの原因は不明ですがストレスという曖昧な言葉で説明されることが多いようです。本当でしょうか?

詳しくはIBSネットなどをご覧ください。(以下の図も同ネットから参照しました。)

過敏性腸症候群(IBS)ガイドQ&Aも御覧ください。

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