クローン病患者血液からのヨーネ菌培養結果(アメリカ)
CIMRIにクローン病の患者の血液からヨーネ菌が培養されたことはあるのでしょうかという、お問い合わせが時々あります。この点について医師や科学者を震撼させた論文を紹介します。やや古い文献ですが、ランセットという雑誌は医学関係では最も権威のある学術雑誌です。
バックグラウンド:
クローン病や炎症性腸疾患の形態は結核、ハンセン病、およびヨーネ病などと共通する特徴を持ちます。そのため、クローン病発生におけるヨーネ菌の役割について議論していく余地があるのです。
研究方法:
著者らはクローン病の患者28人、潰瘍性大腸炎の患者9人、これらの炎症性腸疾患のない患者15人からの血液を採取して遠心をし、バフィコートと呼ばれる白血球の層をもとにPCRおよび培養によりヨーネ菌の関与を調べました。
結果:
クローン病患者13/28名中(46%)、潰瘍性大腸炎患者4/9名中(45%)、および炎症性腸疾患なしの患者3/15名(20%)の未培養バフィーコートサンプルからヨーネ菌DNAをPCRで同定した。(血液を遠心すると左の図のようにplasma=血漿とRed Blood cell=赤血球層のあいだの層がバフィーコート層でリンパ球、単球を含む。好中球は下の赤血球層に集まります。)
生きたヨーネ菌は、クローン病患者14/28人(50%)、潰瘍性大腸炎患者2/9人(22%)から培養できたが、炎症性腸疾患のないヒトの血液からは培養されなかった。
患者がサンプリング時点で免疫抑制薬を使用しているかどうかとヨーネ菌の培養結果は相関しなかった。
培養されたヨーネ菌はPCRで増幅されたMAP特異的IS900フラグメントの存在により確認された。評価された11のMAP分離株のうち他と区別できる9つの株を同定した。
考察:
クローン病患者のほうが対象よりも末梢血中の生きたヨーネ菌がより多く検出された本研究結果は、ヨーネ菌がクローン病の原因であり得るという証拠に寄与するものだろう。
Lancet. 2004 Sep 18-24;364(9439):1039-44.
Culture of Mycobacterium avium subspecies paratuberculosis from the bloodof patients with Crohn’s disease.
https://med.ucf.edu/biomed/about/ourlocations/burnett-building-at-lake-nona/
*バフィーコートの図はサーモフィッシャー社のwebより引用しました。
https://www.thermofisher.com/blog/biobanking/dna-purification-using-buffy-coat/
https://www.thermofisher.com/blog/biobanking/dna-purification-using-buffy-coat/