潰瘍・狭窄性の回腸・結腸疾患とヨーネ菌感染率と関連性(インド)
インドの牛や綿山羊のヨーネ病の蔓延は非常に厳しい状況です。インドでは人のIBDとヨーネ菌の関連について強い関心と疑いが持たれており、ニューデリーにある全インド医科学研究所(AIIMS)のKhanらから重要な報告がなされているのをご紹介します。
背景:ヨーネ菌とクローン病の関わりについては、あるという見解とそうではないという矛盾した報告が出されており、論争の的だった。そのため、我々は、我々はクローン病と腸結核患者におけるヨーネ菌の感染率と臨床経過の関連を調べました。
方法:62例のクローン病患者、32人の腸結核患者、そして32例の出血を伴う痔疾の患者41例から血液と腸のバイオプシー組織サンプルが採取されました。ヨーネ菌に特異的なIS900遺伝子の定量PCRがヨーネ菌DNAの存在を検出するのに用いられた。さらに定量PCRで増幅された産物はシークエンシングによって更に塩基配列の確認がなされた。
腸のバイオプシー組織サンプルを用いてヨーネ菌を検出するための免疫組織化学的観察もなされた。クローン病と腸結核の患者について治療に対する反応や疾患の経過がフォローされた。
主要な所見:
バイオプシー組織中のヨーネ菌特異的DNAの検出頻度
対照例が7.3%だったが、クローン病患者では23.2%(p = 0.03)であり、有意に高かった。しかし、ITB患者では12.5%(p = 0.6)で対照(7.3%)との間に有意な違いは観察されなかった。
血液中のヨーネ菌DNAの陽性率はクローン病患者では10.1%で対照例の4.9%と比べて高かったが、超結核患者の血液からはヨーネ菌DNAは検出差されなかった。
免疫染色
蛍光抗体法で超バイオプシー組織中のヨーネ菌抗原を検出した所、クローン病患者の腸には2.9%で、腸結核患者では12.5%、対照では2.4%で要製造が認められた。
患者の臨床の長期観察
ヨーネ菌感染と治療結果の間に有意な関係は明らかにされなかった。
結論
我々は、クローン病患者の腸のバイオプシー組織からヨーネ菌DNAを高率に検出したことを報告する。
◎本論文は全体を読み出すことができます(英語)。
PLoS One. 2016 Mar 28;11(3):e0152063. doi: 10.1371/journal.pone.0152063. eCollection 2016.
*CMRIのコメント
厚労省の検疫所の報告では2016年には1,040万人が結核に罹患し、170万人が結核で死亡しました。国別では低~中所得国に多く、インドを筆頭に、インドネシア、中国、フィリピン、パキスタン、ナイジェリア、南アフリカ共和国の7か国で、全体の64%を占めています。この報告では研究が進む以前にクローン病と腸結核が混同されたこともあり、肉芽腫性腸炎のカテゴリーである、腸結核とクローン病の患者の腸と末梢血液中のヨーネ菌DNAの検出を見たものです。
腸のバイオプシー組織の蛍光抗体法の観察では、腸結核患者の腸組織により高い陽性率が見られておりますが、この所見とヨーネ菌と結核菌を混同することのない定量PCRの結果を重ね合わせてみると、用いられた抗体は抗酸菌の共通抗原に対して反応している可能性があると思われます。