日本のヨーネ病防疫を米ヨーネ病情報センターが絶賛(アメリカ)

日本のウシヨーネ菌感染症対する取り組み

「Collins paratuberculosis」の画像検索結果牛が血清で抗体陽性になる時と、その牛がいつに糞便中にヨーネ菌を排出するかについてのモデリング研究を日本の研究者が報告した。
本研究は、2018年1月に学術誌Preventive Veterinary Medicine 149、38-46に発表された。(獣医疫学会雑誌

この研究者らは、1,386戸、222,482匹の牛を有して日本の乳牛のほぼ2分の1が存在する北海道でにおける、16年分の牛のヨーネ病に関する試験結果を収集した。
本研究は糞便の排菌が生後12ヵ月という早い時期に始まり、さらにその平均7ヵ月後に血清抗体が検出されることを報告した。
乳牛におけるMAP感染のための診断検査で関係する研究者は、特別の関心を持っての本論文を見るだろう。

PubMedリンクは、下記にある
専門家の方以外の方にはそれが日本のヨーネ病に関して状況を述べているこの研究論文のイントロダクションからの以下の抜粋が興味深いと思われる。

背景
日本におけるヨーネ病の第1の症例は、1927年に死亡した輸入乳牛で報告された。
その後ヨーネ病が日本中に流行したことから、1971年に本病は家畜伝染病予防法で届出るべき家畜伝染病のリストに加えられた。
その後、ヨーネ菌感染が発見された牛は補償金を支払われることにより強制的に淘汰されるように法律が整備された。
さらに牛におけるヨーネ病をターゲットにした国家的血清学的調査が法的な強制的なプログラムとして1998年に開始された、(Kobayayashi,(Japan J. Vet. Med. Sci. 69:1255, 2007)。

日本のヨーネ病防疫
日本で実施されている国家的な調査プログラムは農場にヨーネ病が有るか無いかを知るための定期的な血清学的調査と追跡調査の2つの部分から成り立っている。

追跡調査において5年以内の間隔で24ヶ月例以上の牛がすべて血清学的に検査をされる。
定期検査で患畜が検出されると、その農場で追跡調査が実施されることになります。
定期検査で陽性となった農場では糞便検査と抗体検査のための採血と糞便採取が3年の間に少なくとも5回は実行される。
一旦感染農場とされても、さらなる陽性牛が発見されない場合にはヨーネ菌非汚染農場の地位を回復する。
加えて、受動的な調査として、定期検査時期以外にも臨床的に疑わしい牛が見つかった場合には定期検査時と同様の検査を行われる。
そこで陽性牛が見つかった場合には定期検査と同様の検査が適用される。

日本におけるヨーネ病牛摘発頭数
日本でヨーネ病の防疫プログラムが始まって以来、毎年、全国でほぼ500,000匹の牛が検査を受けてきた。これで摘発されたヨーネ病陽性牛総数は毎年当約1,000頭であった。

米国ヨーネ病情報センターからのコメント
日本には世界で最も積極的なヨーネ病制御プログラムの1つがある。
日本人が国からヨーネ病を根絶することに成功した場合、家畜や畜産物がヨーネ菌を含んでいないことを保証する国際的取引相手への圧力は非常に高まるだろう。

上記報告のオリジナル(英文)はこちらをご覧ください。
https://johnes.org/newsfiles/153840429842907.html

Prev Vet Med. 2018 Jan 1;149:38-46. doi: 10.1016/j.prevetmed.2017.10.009. Epub 2017 Nov 11.
Evaluation of fecal shedding and antibody response in dairy cattle infected with paratuberculosis using national surveillance data in Japan. Yamamoto T, Murai K, Hayama Y, Kobayashi S, Nagata R, Kawaji S, Osaki M, Sakakibara SI, Tsutsui T.

CMRIからのコメント

米国のヨーネ病情報センターは行政に忖度しない検査や研究、情報の提供をし続けてきた。百溪はこの代表のコリンズ教授と第一回の国際ヨーネ病学会(Ames Iowa)以来研究交流を続けてきた。コリンズ教授はヨーネ病の撲滅をなんとかしたいと考えて努力されてきた研究者の一人です。このレポートの中で重要な指摘があります。簡単に補足して整理してみましょう。

①ヨーネ病感染仔牛からの排菌が生後12ヶ月から起こること、
②糞便中への排菌が起きてから約7ヶ月後に抗体が上昇することを紹介している。つまり、従来から国内外で行われてきたELISA法でヨーネ病が疑われる7ヶ月も前から感染牛は無症状で糞便を介してにヨーネ菌をバラマキ環境を汚染して他の牛に感染を拡大するということです。
③この早期排菌が検出された2歳弱の時期には、牛は痩せたり下痢を繰り返すなどの臨床症状を示していません。見たところは健康なのです。
④この報告の最後のコメント「日本人が国からヨーネ病を根絶することに成功した場合、家畜や畜産物がヨーネ菌を含んでいないことを保証する国際的取引相手への圧力は非常に高まるだろう。」は米国の研究者としてこれを書いてくれたのは科学者として素晴らしく立派なことだと思います。私は同様のことをずっと主張して日本の酪農畜産の発展を主張してきましたが、農水省、動物衛生研究所からはひどい迫害を受けてきました。これは彼らが外国、特に米国に対して忖度していること、国民の食の安全や健康を重要視していないことのあらわれではないでしょうか。
⑤「日本には世界で最も積極的なヨーネ病制御プログラムの1つがある。」と強調されましたが、この積極的なプログラムは原文では「the most aggressive Johne’s disease control programs in the world.」です。国民の多額の税金を投入して実施され評価を受けるようになったことも、無知な政治家による輸入制限撤廃によってすべてが無になってしまうことも強調しておきたいと思います。

*日本で毎年1000頭近くのヨーネ病検査陽性牛が摘発されていますが、いずれも非常に軽度なもので、家畜保健所で解剖や精密検査をしてもはっきりした病変の見つかるものは少ないと言われています。世界一の防疫体制をひいて実施してきている日本でさえもまだ根絶はされていないヨーネ病。対策が極めて軟弱ないしはなされていない欧米でのヨーネ病という家畜伝染病の蔓延状況について想像できない方はいないのではないでしょうか。