14ICP速報:牛肉からたくさんのヨーネ菌が検出された報告(ドイツ)
今回の国際ヨーネ病学会の発表でインパクトの強いレポートをご紹介します。これはドイツのと畜場で得られた143例の牛肉のサンプルを調べたところ、筋肉中に高率にヨーネ菌が観察され、さらにこれらは生きた菌であることが培養検査によって証明されたという驚くべきものです。
これまでも横隔膜などの筋肉にかなりのヨーネ菌が見つかったという報告(スペイン)はありましたが、今回の彼らの報告はサンプル数も陽性率もすごく高く、極めて危惧すべき現実があることを教えてくれます。ドイツのヨーネ病汚染率は高いと昨日、夕食でご一緒した、発表者の方(イギリス人)と事情に詳しいドイツの臨床獣医師の方からもお話を聞きました。
この話はドイツの特殊な状況を示すのではなく、欧米全体のヨーネ病汚染の一端を示しているに過ぎないと思います。
演題のタイトル
Detection and isolation of MAP from skeletal musucle tissue of 143 cattle at a German abattoir
H. Fahmen ら (ドイツとイギリスの共同研究です)
2015-2017年の間にドイツのコブレンツのとある公立のと畜場で134例の糞便、腸、腸間膜リンパ節、筋肉がサンプリングされました。これらの牛は初期から末期のヨーネ病の特徴を示していました。この都市はボンやケルンといった市からもそう遠くないところです。
これらのサンプルは新鮮な状態でドイツのKoblenzの州立研究施設に運ばれました。これらの組織サンプル等はまず抗酸菌染色により調べられ、143例の牛の筋肉はヨーネ菌の培養とPCR検査に回されました。更に95例の培養陽性だった筋肉と5例の培養陰性の筋肉についてヨーネ菌に対する2種類のモノクローナル抗体を用いて蛍光抗体法でも観察されました。
結果:
公的なヨーネ菌検査でヨーネ菌感染牛であることが確認された。
ヨーネ菌は様々な部位の骨格筋から検出され、ヨーネ菌感染牛の39%が陽性であり、非感染牛からは認められなかった。
ヨーネ菌の蛍光抗体法での検査では筋肉からヨーネ菌が分離された95例のうちで92例に陽性像が認められ(97%)、5例の非感染牛では前例が傾向抗体検査陰性だった。
結論:
感染牛においてヨーネ菌が全身に分布することは知られていたが、今回の検査結果は予想以上にヨーネ菌が筋肉に分布していることを示した結果だった。
*CMRIからのコメント
ヨーネ病の汚染の激烈さはドイツに限りません、他のヨーロッパ各国、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなども同様です。これはヨーネ病に対する国家防疫の貧弱さが原因です。
この報告は牛肉のヨーネ菌汚染が深刻で、外側は加熱しますが、肉の内部はあまり加熱しないで食べることの多い牛肉には生きたヨーネ菌がいて、人に感染をもたらす可能性がある警鐘を鳴らしたものです。
欧米に比べて我が国のヨーネ病対策はとても優れており、あまり心配はありませんが、輸入牛肉については十分に加熱するなどの自衛策が必要です。
日本の農水省や厚労省は国内の家畜防疫や食品安全にはとてもシビアですが、大量に輸入される外国産の乳製品や原料乳製品、そして肉については何らの検査も輸出に際しての検査も要求しておらず、ダブルスタンダードの状況です。
ヨーネ病に関して我が国よりひどい汚染状況であることが明確な海外からの輸入酪農畜産物に対しては、何らかの検査成績や現地の生産農場のヨーネ病汚染が無いことなどの証明書提出等の安全対策が望まれます。消費者が国に要求してく必要があるでしょう。
ドイツのコブレンツ市の情報 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%96%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%84
アメリカの肉牛のヨーネ菌汚染もウイスコンシン大学が報じました。(2018年9月20日 CMRIブログ)
アメリカの肉牛のヨーネ病汚染は想像以上に高かった。(アメリカ)
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