IBD患者から分離されたマクロファージの腫瘍壊死因子産生能は低下していたが、他のサイトカイン産生は正常~亢進していた
マクロファージ機能の異常はクローン病(CD)の発症に関連があるとされてきた。しかし、患者由来マクロファージがヨーネ菌の感染に対してどのように応答するのかは調べられていなかった。ヨーネ菌がクローン病に関連すると長く考えられてきたことから、著者らはIBD患者のマクロファージがヨーネ菌と腸内の共生細菌に対する反応に異なった炎症反応を起こすのかを調べた。
材料と方法:クローン病患者、潰瘍性大腸炎患者(UC)と対象の非IBDの患者から末梢血単球を分離して、培養によりマクロファージに分化をさせた。
マクロファージにヨーネ菌、鳥型結核菌、大腸菌、エンテロコッカスフェカーリスを感染させ、サイトカインレベルと細胞表面レセプターを経時的に測定した。
結果:細菌感染後、CD患者由来のマクロファージは低いTNFα分泌を示したが、IL-23分泌は亢進され、IL-12分泌とCD40発現は維持されていた。更に、CD患者由来のマクロファージは感染後に低いIL-10分泌を示した。
IBD患者由来のマクロファージのTLR-2とTLR-4発現はもともと高く、細菌感染により影響を受けなかった。
大腸菌、エンテロコッカスフェカーリスの感染ではヨーネ菌感染と変わらないサイトカインの動きを示し、ヨーネ菌特異的な反応は見られなかった。
UC患者由来のマクロファージは抗酸菌感染に対して、CD患者のマクロファージほど減弱していないTNFα産生を示し、IL-10の分泌は維持されていた。
考察:著者らはCD患者のマクロファージに見られた感染後のIL-23レベルの増加とIL-10レベルの低下が CD患者に見られる炎症の増悪に関連しているのではないかと考察した。
Immunobiology. 2011 Aug;216(8):961-70. doi: 10.1016/j.imbio.2011
CMRIからのコメント
リンパ球や他の細胞を含まない、純粋分離培養したマクロファージを用いた実験では実際の体内で起きる免疫応答と同質の条件ではないかもしれない。できれば全血を用いた実験(X-vivo実験)が重要ではないかと百溪は考えます。私が牛の全血液を用いたヨーネ菌抗原に対する実験では国際特許取得を行った、興味深い結果を得ることができています。
Buza JJ, Hikono H, Mori Y, Nagata R, Hirayama S, Aodon-geril, Bari AM, Shu Y, Tsuji NM, Momotani E. Infect Immun. 2004 Apr;72(4):2425-8.
Buza JJ, Mori Y, Bari AM, Hikono H, Aodon-geril, Hirayama S, Shu Y, Momotani E. Infect Immun. 2003 Dec;71(12):7223-7.
参考1 IL-23の自己免疫疾患発症との関連について参考文献としてを御覧ください。
https://www.natureasia.com/ja-jp/reviews/highlight/10697
インターロイキン23(IL-23)を欠くマウスを使った実験から、自己免疫性炎症際にこのサイトカインが重要な役割を果たしていることがわかってきた。IL-23のこうした影響は、IL-6、IL-17および腫瘍壊死因子(TNF)を生産する病因性のCD4+T細胞集団の分化を促進することによっていることが、今回The Journal of Experimental Medicineに発表された研究で明らかになった。 IL-23に依存して分化し、IL-6,IL-17およびTNFを生産する病因性CD4+T細胞集団が自己免疫病の発症に関与している点をもっと研究して、病原性を抑える修飾をするなどができないのだろうか。
参考2 結核とTNFαの関係
http://dra.e-humira.jp/safety/kekkaku_03.html
参照してお読みください。
本研究を実施したポルトガルのUniversity Fernando Pessoa。